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バーカウンター

「良い」とは何か?

良い、とは何かというのを追求したくなるのが人間の性。

急な書き出しであるが、いつもこういったことに悩む。四十不惑というのをとうの昔に過ぎてしまったにも関わらず、迷うことばかりだ。

というのも、何かを始めるなら上質なものの方が良いと考えるもので、このバーで言えば、カクテルの豊富さ、照明の明るさ、椅子の座り心地、酒を幅広く取り扱う、ツマミのバリエーションやオリジナリティ、接客スキルの向上など、これもあれも良くしたいと考えてしまうことがあるわけだ。

残念なことに、時間も金銭も、なかなか全てを叶えられるほどは持っておらず、取捨選択をしていくのだが……さて、どれからやっていくのが一番良い選択なのだろう、というところがポイントだ。私は優先順位をつけるのが苦手な性質なのだ。

悩むと妻のことを思い出す

こういったときに妻がいればなと思う。妻はこういったことを決めるのが得意だったし、もし仮に私がやりたいことがあれば、それについて真摯で丁寧なフィードバックをしてくれたものだ。それほど頼りになる自慢の妻だったから、頼りすぎてしまったかもしれない。妻が亡くなってから、どうも私は停滞しているのかもと焦ってしまう時がある。

ここは妻と一緒に開いた店だから、私が生きているうちはきちんと開き続けられるようにしたい。だが、バーは本当にあちらこちらにあるし、新しい店もドンドンとできてくる。

それはそれで良いのだが、競争に負けてしまえば、この店は閉じるしかなくなってしまう。人は良いものを求めていく。わざわざ劣るところに行こうというのは物好きなのだ。

客観的な観点を得るための試行錯誤

妻の視点、とまではいかないが、一度私の接客を捉えるビデオカメラでも置いてみた方が良いかもしれない。客観的に見ることでしかわからないものもあるだろう。それと、久しぶりに他のお店も色々巡ってみて、自分のお店との違いを理解する必要があるのかもしれない。昔は、年を取れば、優れた人間になると思っていたものだが、なかなかどうして、そうは上手くいかない。自分の親や先輩方も、こういった悩みを持って進んでいったのだろうなとは思う。

少し、お客さんも見るようなブログに書くようなことではないなと思いつつも、人間味のあるマスターがいると面白がってくれる人もいるかもしれない。まあ、バーのマスターはだいたいどの人も一癖二癖、どこか面白いところがある人ばかりなので、私以上に迷っている人もいるかもしれないな。どうか、良い人生を歩めるようにしていきたいものだ、

というところで開店準備をしていく。一日一日、まずはしっかりやっていこうじゃないか。