こういう仕事をしていると、人から恋愛相談をされることがよくある。なんとなく、バーのマスターとして箔がついてきたというか、私も若いころによくやったものだなと思い返すものだ。
人にはそれぞれの事情があり、それぞれの苦労や悩みがつきないが、お酒を飲みながら、あえて深い関係性でない人間に相談するというのは悪くない。
「モテ期だけどタイミングが悪い」
今回は、とある女性、アヤカ(仮名)としておこう。その子から相談を受けた話を書こうと思う。
もちろん本名ではないし、古い話だったり、性別を変えたり、年齢も違うようにしたり、とお客個人には結びつかないようにしている。
だからある種、創作のようなものだが、まあ客商売ということもあり、そこはご了承いただこう。
アヤカ:マスターはさ、モテ期ってきたことあります? 私、今それなんですよ~。
カルーアミルクを嗜みながら、20代も半ばを過ぎたアヤカはそんなことを言ってきた。これまで仕事と趣味を楽しんでいて、男なんて……と言っていたこともあったと記憶しているが、最近はそういった悩みを持っているらしい。
アヤカ:なんですかね、彼氏欲しいなって思うとできないんですけど、仕事とか趣味に全力出していると、男が寄ってくるんです! 嬉しいんですけど、タイミング的にちょっと邪魔なんですよね。
思いの他、複雑な様子で顔をしかめながら、アヤカは笑う。おそらくだが、彼女は真剣に集中している様子がどこか男をくすぐるのだろう。だが、仕事と趣味に本気を出しているなら、それは余計なことというのもわかる話だ。
なるほどと相槌を打ちながら、私自身のアドバイスを伝えるべきか迷った。本当に解決策を他人に求めている、という訳でもないタイプで、言うのも野暮というものである。けれど、珍しく、彼女はこの日にアドバイスを求めてきた。
アヤカ:どうしたらいいんですかねー? 一人で考えても迷っちゃって…。
いつかは頼れるマスターに
さて、私はどのようなアドバイスをしたと思うだろうか? ここを読んでいる人にあえて問題の形にしておこう。私の人生経験とこれまでに色々なお客さんとのやり取りからの学びをミックスした内容だが、伝えたあとにアヤカはこう言ってくれた。
アヤカ:ありがとうございます! あまり参考にならないかもだけど聞いておくかーぐらいに思ってたけど、すごい、さすがバーのマスターって感じで、タメになりました。今度は彼氏と来ますね。
意外と好評のようで良かったが、いつかは最初から頼りにされるバーのマスターになりたいものだ。