バーに来るお客さん同士での恋愛があり、無事に結婚まで行った二人がやってきた時の話をしよう。
バーで意気投合した二人
20代半ばのタクヤさんとユカリさんは、たまたま私のお店で隣同士になって意気投合し、何度かここで飲んでいるうちに仲良くなって付き合い、とうとう結婚までしたという感じである。私としては、こういったことが大変うれしく、勝手ながら、自分の子どものように嬉しい。私と妻の間には子どもいないので、擬似的なものであるが、若い子達が幸せになる手伝いをできたといえば、妻も喜びそうなものである。
タクヤさん:いやでも、マスターには本当にお世話になりました。ユカリ、俺はさ、マスターにすっごい励まされてね、今こうやって幸せになったわけ。本当、感謝しかないよ。
ユカリさん:それ言うと、私もそうなんだよね。タクヤが仕事忙しくてなかなか会えないときとか、私もマスターに話聞いてもらって助かったよ。
私:いえ、ちょっとばかりお手伝いができただけですよ。お二人が幸せになって、私も本当にうれしいです。
タクヤさん:だから、今日はマスターにいっぱいお礼を言いながら、ちゃんと売上に貢献しようと思うんだよね。なあユカリ。
ユカリさん:そうそう、マスター、今日は高いお酒とかもガンガン飲むし、もし大丈夫ならマスターも少し飲んでよ!
私:ありがとうございます。おすそ分けということで軽く一杯だけいただきましょう。あと、取っておき出しますよ。
二人が好きなお酒ももちろんわかっている。普段はなかなか出さないが、こういう時にこそ出すお酒があるのだ。
私:では、まずはお二人へどうぞ。とっておきです。
タクヤさん:お、ウイスキー。すごい良い奴じゃない? なんかこれは高そうな感じが…。
ユカリさん:マスターも入れたら、乾杯して…ちょっとずつ飲んだ方が良さそう。
私:それでは、お二人の末永い幸せを願って…。
お祝いのお酒を出して祝福
ちなみにこの時に出したお酒は、竹鶴25年ピュアモルト。昔にストックしてあり、こういったお祝いの時だけに出すことにしている。
タクヤさん:うまっ。マスターいいの? これ絶対貴重品でしょ。
ユカリさん:おいしい~。これは飲んだことないし、うーんもったいないぐらい。
私:喜んでいただけてなにより。私もこういう時にしか飲まないので嬉しいです。
タクヤさん;え、なんだろうこれ。教えてよマスター。
ユカリさん:びっくりしないから~。
二人に竹鶴25年ですと伝えると大騒ぎだった。祝いにはちょうどよいにぎやかさで、たまにはこういう時間も良いなと思うのだった。お店の常連さんも二人を祝福しつつ、竹鶴飲みたそうにしていたのには少し笑ってしまったが。