シングルモルトとブレンデッドの違い
家でゆっくり飲みたいけれど、種類が多すぎて何を選べばいいか分からない。そう言ってこのカウンターで相談を受けることは少なくない。ウイスキーの世界は海のように深いが、泳ぎ方さえ知っていれば、これほど豊かで安らぐ時間を与えてくれる酒はない。
まず知っておくべきは、ウイスキーのラベルに書かれたシングルモルトとブレンデッドという二つの言葉の意味だ。これは製法の違いであり、音楽で例えるならソロとオーケストラの違いに似ている。
シングルモルトとは、単一(シングル)の蒸留所で作られた、大麦麦芽100%のウイスキーのことだ。その土地の水、風土、蒸留器の形状、そして作り手のこだわりがダイレクトに反映される。強烈なスモーキーさを持っていたり、華やかな果実の香りがしたりと、蒸留所ごとの個性が際立つのが特徴だ。
一方、ブレンデッドは、複数の蒸留所のモルトウイスキーと、トウモロコシなどを原料とした穏やかなグレーンウイスキーをブレンドしたものだ。数十種類もの原酒を、ブレンダーと呼ばれる職人が匠の技で混ぜ合わせ、飲みやすくバランスの取れた味わいに仕上げている。
突出した個性を楽しむのがシングルモルト、複雑なハーモニーと飲みやすさを楽しむのがブレンデッド。まずはこの違いを頭の片隅に置いておくといい。
初心者が最初の相棒を選ぶための羅針盤
では、初心者はどちらから手をつけるべきか。私が推奨するのは、まずはブレンデッドウイスキーから入る道だ。なぜなら、ブレンデッドは万人に美味しく飲んでもらうことを目的に作られているからだ。
ジョニーウォーカーやバランタイン、シーバスリーガルといった世界的な銘柄は、いつ飲んでも味が安定しており、角が取れていて口当たりが滑らかだ。ソーダで割るハイボールにしても崩れない骨格を持っているため、食事中の一杯としても優秀である。
もし、せっかくだからウイスキー特有の個性に触れてみたいという冒険心があるなら、シングルモルトに手を伸ばすのも悪くない。ただし、いきなり癖の強いもの(正露丸のような香りのするアイラモルトなど)を選ぶと、トラウマになってしまうこともある。
最初はザ・グレンリベットやグレンフィディックのような、フルーティーで華やかなスペイサイド(スコットランドの地名)のものを選ぶのが定石だ。これらはウイスキーの教科書とも呼ばれるほどバランスが良く、蜂蜜や青リンゴのような香りが、ウイスキーへの愛着を深めてくれるだろう。
グラスと氷への投資が、家飲みをBARに変える
良いボトルを手に入れたら、自宅での飲み方にも少しこだわってみてほしい。と言っても、難しい技術はいらない。必要なのはグラスと氷へのちょっとした投資だ。
まず、ウイスキーを飲むグラスは、飲み口が薄いものを用意することだ。ガラスが薄いほど、唇に触れたときの違和感が消え、液体の滑らかさをダイレクトに感じることができる。香りを逃さないために、口がすぼまったチューリップ型のテイスティンググラスがあれば理想的だが、小ぶりのワイングラスでも代用は可能だ。
そして最も重要なのが氷だ。冷蔵庫の製氷機で作った氷を使ってはいけない。あれは空気が多く含まれており、カルキ臭も混じっているため、溶けるのが早くウイスキーの味を濁らせてしまう。
ウイスキーを品良く味わうためにも、コンビニやスーパーで売っているロックアイスを買ってくることをおすすめしたい。透明で硬く、溶けにくい氷は、ウイスキーを冷やしながらも水っぽくさせず、カランとグラスに当たる音さえも美しく響かせてくれる。
お気に入りの音楽をかけ、照明を少し落とし、琥珀色の液体を揺らす。その豊かな香りと向き合う時間は、何にも代えがたい大人の贅沢だ。さあ、今夜の帰りに一本、あなたの新しい友を探してみてはどうだろうか。
